5.9.15

RDV de l'Erdre(ランデヴー・ドゥ・レルドル)

この前やっと夏が来たと思ったのに、気づけばもう9月。
 
今年のナントの夏は比較的暑い日が多かったように思いますが、個人的にはとにかくあっという間に過ぎてしまった二か月でした。

暑い時期は外を歩くのも億劫なのに、いざギラギラの太陽が顔を出さなくなってしまうとなんでこうも寂しい気持ちになるんでしょう。

フランスの新学年は9月から始まるので、街を歩いていると一つ上の学年に進級した学生たちのドキドキワクワクが耳まで聞こえてきそうで、なんだか嬉しくもなります。
「あぁ、終わりではなくて始まりの季節でもあるんだな」と。

このブログではいつも自分のクリエイションか食べ物の話ばかりで、あまりナントの街の様子を紹介する機会がなかったので、今回から数回に分けて、去り行く夏を駆け足で追いかけながら巡った、ナントのイベントの様子を写真とともにお届けしたいと思います。


わたしは毎年夏が始まった途端、すぐ終わりの方が楽しみになってしまうのですが、その理由の一つがこれ。

Jazzとボートのフェスティバル「レ・ランデー・ドゥ・レルドル(Les RDV de l’Erdre)」。

今年で29回目を迎えたこの音楽イベントは、毎年世界中から多くのミュージシャンが招待され、地元ナントとエルドル川周辺に住むたくさんの人たちに愛され続ける、Jazzと水上レジャーのお祭りです。
夏の終わりを告げる一大イベントとして、毎年8月最後の週から9月の頭に数日間開催されます。

イベントの目玉となるのが、エルドル川上流から約二日間かけてナントのセヌレー河岸まではるばる川を下ってくる数々のボートたち。


中には手漕ぎボートの人たちも!

河岸のオーディエンスから一斉に「ブラヴォ〜!(Bravo~!)」と声援が飛び交います。


市庁舎前のセヌレー河岸には長旅を終えたボートが続々と集まり始めました。


まるでここは屋外ボート博物館!普段はこんなにたくさんのボートを一度に見ることはできないので、とても貴重な体験です。

奥に見えるサン・ミエル橋の上にも辿り着いたボートを見ようと集まった人がたっくさん!

麦わら帽にボーダーのTシャツを着た船乗りコーデの人たちもちらほら。素敵ですね〜。



夕方に到着したボートたちは、翌日のお昼にはエルドル川上流へと再出発。
なんとも過酷なスケジュール!熱中症になったりしないか心配。


「À l'année prochaine~!(ア ランネ プロシェ〜ンヌ)」また来年〜!
と手を振りながら出発する人たち。

多くの観客が見守る橋の下を通過する際には

「なぁんだ〜スカートはいてるマダムはいないのか〜!(パンツ見えない)残念だな〜!」

と、退場の際にも必ずユーモアを振りまいていくフランスおじさんたち、さすが。

(同じこと言いながら去って行く人を今年だけで最低5人は見たので、これは彼ら共通の十八番ジョークらしい…去年も言っていたし、たぶん来年も言ってくれるでしょう。) 

そのおじさんたちのボケに対し、笑いながら
「コラ!このスケベ軍団が!ちゃんと前見て漕ぎなさい!」
と的確なツッコミを入れるマダムたちの手慣れた対応もさすがです。




川沿いには多くの屋台が立ち並び、ナント地方の名物白ワイン「ミュスカデ」やおなじみガレット/クレープ、ケバブからサムサまで、多国籍な料理が楽しめます。

わたしは高カロリーな見た目にひかれて、ハンガリー名物の揚げパン「ラーンゴシュ(Langos)」とやらを試してみました。
むしゃむしゃ食べてたら大雨が降ってきて、パンごとべっちゃべちゃになったけどおいしかった。

ちなみに右上の写真の不思議な「やかんタワー」は、オリジナルブレンドのミントティーを売る屋台のとなりに置かれていたもの。
物語に出てくる魔法使いが使っていそうな魅力的な佇まい!お湯を沸騰させるマシンなんだって。

*

今年でおそらく5回目の参加にして 「レ・ランデー・ドゥ・レルドル(Les RDV de l’Erdre)」で今回わたしが初めて体験をしたのが、エルドル川がロワール川に合流する地点から程近い場所に立つアート&カルチャースペース「Le Lieu Unique(ル・リュ・ユニーク)」とメイン会場のあるセヌレー河岸をつなぐ、片道約5分間のプチ・クルージング!

今まで中心地の下をくぐる連絡水路は通ったことがなかったので、今回貴重な体験ができてとても満足。
地上とはまた違った角度でイベント会場を楽しむことができました。


サン・ミエル橋をこうやって下から見上げるのも普段はなかなかできない珍しい体験。 
いつもは見慣れた橋もなんだかよりいっそうかっこよく見えます。


と、ここまではボートと会場の雰囲気ばかり紹介しましたが、「レ・ランデー・ドゥ・レルドル(Les RDV de l’Erdre)」の一番のメインといえば、やっぱりJazzコンサート!

エルドル川沿いに設けられた10以上あるステージでは、世界中で活躍する幅広いジャンルのミュージシャンたちが、素晴らしいパフォーマンスで会場を盛り上げます。

川沿いに停泊するボートの上や河岸のバーでも常に誰かが演奏していて、イベント中のエルドル川はいつもに増して賑やか。
夜は会場が色とりどりにライトアップされ、とてもロマンティックです。

このイベントでのパフォーマンスが注目をあび、フランス各地、また世界へ進出していく人たちもいます。
会場に集まる音楽好きの中には、お気に入りのグループを発掘しよう!と気合い満々の人もいるので、若手アーティストにとっては一種の登竜門とも言えるのかもしれません。

わたしもそんな人たちと並んで、気になったグループの演奏を聞いてきました!

*

The Andrew Sisters好きのわたしが絶対に見逃せなかったのが、彼女たちの魂を受け継ぐべく活動を続ける女性トリオヴォーカル、The Sand Sistersのライブ。

Sing Sing SingIn The MoodBoogie Woogie Bugle BoyRum And Coca-Colaなど、誰もが聞いたことのある定番のチューンが盛りだくさん。
今まで何百回と聴いたけど、また何度でも聴きたくなる素晴らしい曲ばかり。

三人の甘いハーモニーにかなり癒されました。
直射日光に照らされ、汗だくになりながら場所取りしたかいがあった…。


レ・ランデー・ドゥ・レルドル(Les RDV de l’Erdre)」のいいところは、イベント中常に必ずどこかで誰かが音楽を奏でているということ。

たまたま出くわしたグループの演奏に足を止めてしばらく聴いていたら、だんだん好きになってきて、結局予定を変更して最後まで聴き入ってしまう、なんてこともよくあります。

プログラムを熟読して分刻みで計画を立てるのも行動範囲を決める目安になるので大切ですが、会場には予想していた以上の人混みができていたりして、思った通りに動けないことも少なくないのです。
五感の赴くまま、ストレスフリーに行動するのもイベントをより楽しむコツかもしれません。

*

突然降り出した雨から逃れるべく、びしょびしょの揚げパンを片手に大木の下で雨宿りをしていたら、 ラ・ローラ号のデッキ上で地元の吹奏楽バンド、La Fanfarchiの演奏が始まりました。

大雨に濡れた楽器でちゃんと演奏し続けられるのかな…とひやひやしていたけど、ちょっとやそっとの雨じゃぁびくともしない、むしろそれすら楽しんじゃうフランスの人たち。好きだわ〜。

わたしのように雨宿りをしながら演奏を聴いていた人たちも軽快な音楽に乗ってだんだんと体を揺らし始め、前に出て踊りだす人まで登場。
その熱気に負けたのか、いつの間にか雨もすっかり止んでいました。


彼らの演奏のあとはギターを持ったトリオが出てきて、フランス人なら誰でも知ってる古き良き時代のシャンソンを歌い始め、会場は再び一つに。
アンコールではわたしの好きな"Je ne veux pas travailler"も歌ってくれてサイコーでした。

*

イベントの大とりをつとめたのが、1998年ナントで結成し、この「レ・ランデー・ドゥ・レルドル(Les RDV de l’Erdre)」から世界へと進出したソウル&ファンクミュージックグループ、Malted Milk。
パワフルな歌声で誰もを魅了する女性シンガーToni Greenとのコラボで素晴らしい演奏を披露してくれました。

魂を揺さぶる力強い彼女の歌声が洗練されたバンドの演奏と交わって、凄まじい化学反応を起こしていました!ユーモアたっぷりのマイクパフォーマンスもさすが。

エルドル川の水上に浮かぶステージの周りは、こちら側も向こう岸もどこを見渡しても人でびっっちり!!
中には、プライベートボートで水上からライブを鑑賞する人まで!

ちぎれるほどの大拍手に見送られ、イベントは大盛り上がりで幕を閉じました。


古くから河川と深いつながりを築いてきたナントの歴史と生きた音楽を同時に体感できる、優雅で賑やかな数日間。
わたしが毎年楽しみにしているこの楽しい雰囲気が伝われば幸いです!

ナントを訪れる際は、ぜひ「レ・ランデー・ドゥ・レルドル(Les RDV de l’Erdre)」の日程に合わせて旅のプランを立てていただきたい!


ではまた次回をお楽しみに〜!

No comments:

Post a Comment