14.8.13

Le vent se lève!...il faut tenter de vivre!

最近毎日食べているフロマージュ・ブロン+フランボワーズソース

海にいきたい…

と一人つぶやいてみたら、頭の中に突然ジブリ映画の「海がきこえる」の「海になれたら」が流れてきた。
映画は一度も見たことがなくて、大学生のときに図書館で借りたジブリのサウンドトラック集CDに入っていたこの歌しか知らない。
メロディーがとても心地よくて、聞くたびに胸にさ〜っと潮風が吹く感じがする。
大学時代の友達がとてもいい作品だと言っていたので、いつか映画も見てみたいなぁ。

ジブリといえば、最新作「風立ちぬ」。賛否両論らしいけれど、ジブリファンとしては絶対に見逃せない。
予告編を見てさらに映画を見たい気持ちは高まるけれど、フランスでの上映は今のところ未定。
来年に持ち越しそうな予感。

ジブリの新作映画が公開されるたびに映画と同じく楽しみなのが、
スタジオジブリの舞台裏を取材した特番や宮崎監督、鈴木プロデューサーへのインタビュー映像。
「風立ちぬ」公開記念特別番組
 
宮崎監督、「もののけ姫」のときの舞台裏密着映画に比べたらすごく痩せている。
大丈夫だろうか…ちょっと心配。元気に長生きしてほしいです。

でもよく考えたら「もののけ姫」からもう16年も経つのか…ジブリ映画は本当に色あせないなぁ。
逆に子どものときには何度見ても分からなかったことが、大人になってみて見返すと「なるほど」と思うことがたくさんある。

特にわたしは「魔女の宅急便」が大好きで、セリフはほぼ全て暗記している。
(しかも映画が公開された89年生まれということで、ただならぬ運命を感じている)
実家にあったレーザーディスク(なつかしすぎる…)がすり減るほどに何度も何度も繰り返し見ていたけれど
なぜ飛行船を見に行ったキキが急にトンボに冷たくあたるのか、なぜそのあと魔法が弱くなってしまうのか、
子どもの頃はずっとそれが謎で、キキは変な子だなとばかり思っていた。

それが、自分もキキくらいの年頃になり思春期というものを迎え、
「やきもち」という感情を覚えて初めてキキの気持ちがやっと分かったときは、感動したものだ。

わたしの人生はすべてジブリで語れるほど、ジブリ作品の与える影響はとてつもない。
哲学とか難しいことは苦手だけど、唯一あるとしたら、それはジブリ作品の中にあると思う。

もしスタジオジブリがなかったら、もし宮崎駿監督がいなかったら、今のこの日本は有り得ただろうかとよく思う。
不況や自然災害、恐ろしい事件などの暗い出来事をジブリ作品のピュアさが浄化して、
それで世界がバランスをとっているような気がする。

最後に、映画「風立ちぬ」に関係深い、堀辰雄の小説『風たちぬ』の中で訳されている
フランスの詩人Paul Valéryの詩、『Le cimetière marin(海辺の墓地)』の後半の一部を紹介します。
元の詩自体はけっこう長くて、生と死について描かれた熱い表現と情景描写が美しい。

声に出して読んでみるとさらにフランス語の言い回しの美しさに気づかされる。 
フランス語ってやっぱり美しいなぁ。
(脚本家、俳優のジャン=クロード・キャリエールの詩の読み語り映像が見られます。
 →Le Cimetière marin de Paul Valery lu par Jean Claude Carrière
ビデオに出てくるネコちゃんがめちゃ可愛い。 


Non, non! . . . Debout! Dans l'ère successive!
Brisez, mon corps, cette forme pensive!
Buvez, mon sein, la naissance du vent!
Une fraîcheur, de la mer exhalée,
Me rend mon âme . . . O puissance salée!
Courons à l'onde en rejaillir vivant. 


否! 否!… 立て! 続きゆく時代の中に!
打ち砕け、私の肉体よ、この物思う姿を!
吸え、私の胸よ、風の誕生を!
海が吐く爽やかな風が、
私に、魂を返す… おお、潮風の力よ!
波に向って走るのだ、生き生きとほとばしるために!

 
Oui! grande mer de delires douée,
Peau de panthère et chlamyde trouée,
De mille et mille idoles du soleil,
Hydre absolue, ivre de ta chair bleue,
Qui te remords l'étincelante queue
Dans un tumulte au silence pareil 


そうとも! 生まれながらに荒れ狂うさがの偉大な海よ、
豹の毛皮と、太陽の千また千の偶像の
孔を穿たれた古代の兵士のマントよ、
己の青い肉体に酔い、
沈黙に似たどよめきの中で
輝く君の尾を再び噛む、絶対のヒドラよ


Le vent se lève! . . . il faut tenter de vivre!
L'air immense ouvre et referme mon livre,
La vague en poudre ose jaillir des rocs!
Envolez-vous, pages tout éblouies!
Rompez, vagues! Rompez d'eaux rejouies
Ce toit tranquille où picoraient des focs!


風立ちぬ!いざ生きめやも!
広大な風が私の本を開き、また閉じる、
波は飛沫となり、岩々から勢いよくほとばしる!
飛べ、すっかり目をくらまされたページよ!
波よ、打ち破れ! 喜びあがる水で、打ち破れ
三角帆たちがついばんでいた、この静かな屋根を!

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